歩合給を時間外労働とした賃金体系の相当性
労働者に対し、時間外労働などの対価として労基法37条の定める割増賃金を支払ったとする事ができるか否かを判断するには、①通常の労働時間の賃金にあたる部分②割増賃金にあたる部分とに判別することができるか否かを検討する。通常の労働時間の賃金に相当する部分の差額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべき労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。雇用契約において、ある手当が時間外労働などに対する対価として支払われるものとされているか否かは、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべき本件において、①実際の法定計算において算出した額と比較されることはなかった。②求人情報においても、本給と歩合給を加えたものであり、歩合給が時間外労働などの手当であるとの記載はなかった。③乗務員が所定内労働時間において、最低賃金しか得られずに働くとは理解し難い。④割増賃金の性質を含むとしても、通常の賃金と割増賃金の部分の判別をすることができない。
2020. 05. 09
就業規則以上の優遇をされた労働条件通知書の効力について
労働条件通知書を作成するに当たり、就業規則以上のものを作成した場合、その通知書記載の内容が適用される。また、就業規則以下のものを作成した場合、就業規則を基準とされる。また、深夜労働に関する賃金についても、給与の一部とみなす為には、仕分けをして従業員に分かるような記載方法を用いる必要がある。禁反言の法理禁反言の法理(きんはんげんのほうり、英語:estoppel、エストッペル)とは、一方の自己の言動(または表示)により他方がその事実を信用し、その事実を前提として行動(地位、利害関係を変更)した他方に対し、それと矛盾した事実を主張することを禁ぜられる、という法である。最低基準効使用者は作成した就業規則に原則として拘束されるのです。 さらに、上記より導かれる法的効果として「就業規則の最低基準効」があります。 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、当該無効部分には、就業規則で定める基準が適用されることになります(労働契約法12条本文)賃金の支払いの確保などに関する法律(退職労働者の賃金に係る遅延利息)第六条 事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。2 前項の規定は、賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合には、その事由の存する期間について適用しない。賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(遅延利息に係るやむを得ない事由)第六条 法第六条第二項の厚生労働省令で定める事由は、次に掲げるとおりとする。一 天災地変二 事業主が破産手続開始の決定を受け、又は賃金の支払の確保等に関する法律施行令(以下「令」という。)第二条第一項各号に掲げる事由のいずれかに該当することとなつたこと。三 法令の制約により賃金の支払に充てるべき資金の確保が困難であること。四 支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争つていること。五 その他前各号に掲げる事由に準ずる事由
2020. 05. 09
パワハラ行為の判断基準について
パワハラについては、回数や頻度、継続性によっても、違法と判断される可能性がある。Y2の発言は業務との関係で指導、叱責する中で行われたもの人格非難に及んだり名誉感情を毀損するものであったとはいえない継続的、執拗なものであったともいえず、業務上の指導、叱責の範囲を逸脱したものということはできない。しかし、Y3については、回数及び、頻度が多く、継続的、執拗に行われたものと言える。違法なパワハラ行為にあたるものと言える。国賠法1条1項の公権力の行使については当たらないとして、詳細は次のとおりとする。公権力の行使公権力の行使とは,国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国家賠償法二条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用を意味します今回のパワハラ行為は、こちらの私経済作用に該当するとされた。
2020. 05. 09
試用期間満了による解雇の有効性
基本的には、これまで同様に①中途採用者を雇い入れる為の即戦力としての雇用②何に対しての要望③注意、指導今回についても、これらが争点になっている。試用期間中の執務状況などについての観察などに基づく採否の最終決定権を留保する趣旨のものであると解される。採否の趣旨を前提とした上で、観察などによってY社が知悉(しりつくす。)した事実に照らして、適当でないと判断これが社会通念上相当かどうか検討すべき
2020. 05. 09
HIV感染不告知を理由の採用内定取り消しの適法性
下記①から③を考えると、既往症についても仕事に関連するかどうかは重要になると思われる。①HIVの治療方法が確立されていること、②危険性は無視できるほど小さいもの、③社会的偏見や差別が根強く残っている総合考慮すると、HIV感染の事実を告げる義務があったということはできない。応募者に対しHIV感染の有無を確認事ですら、HIV抗体検査陰性証明が必要な外国での勤務が予定されているなど特段の事情のない限り、許されない持病の有無を問われた際に上記事実を告げなかったとしても、これを理由とする内定取り消しについて、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認することができる場合に当たるということはできない。
2020. 05. 09
配置転換後の転居命令の有効性
配置転換をしたからといって、転居の必要があるとまでは言えず、それを強制するには必要性がある。転居命令は業務上の必要性を欠き、権利濫用であって無効転居命令は本件配置転換の約1年後に出されたもの転居せずに自宅から茨城工場に通っていた。早朝、夜勤の勤務は必要ない。緊急時の対応も考え難い。転居しなければ、労働契約上の労務の提供ができなかったということはない。企業の安全配慮義務の観点から言っても、赴任手当などの金銭的負担の上で転居する機会を与えている。安全配慮義務は果たしている。これを超えて、転居を命令する義務まではない。憲法22条1項何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。民法90条(公序良俗)公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。民法90条を介して原告Xと原告Y社の労使関係にも一定の拘束力がある。配転命令特段の事情の存する場合でない限りは当該命令は権利の濫用になるものではない。
2020. 05. 09
会社の計画年休の必要性
有給休暇について、計画年休については協定書の作成がマストであり、それがない場合には従業員が有給休暇を使用したとしてもそれを拒絶する術はない。法定休暇と会社の与えた休暇についても、明確な仕分けがないと会社の好きに与えることができないので、注意をする必要がある。計画年休について労基法36条6項に言うところの有効な労使協定は存在しない有給休暇をY社が時期指定することはできない。Y社就業規則は、法定年次有給休暇と会社有給休暇を区別する事なく、20日のうち15日分をY社が時期指定する。そのうちのどの日が会社有給休暇に関する指定であるかを特定することはできない。全体として無効というほかない。年間20日の全てについて、自由に指定することができるというべき
2020. 05. 09
定年再雇用後の賃金の決定について
定年再雇用の事案において、これまで定年後の契約が決定しないからという事で、再雇用に関しての給与額の未払い賃金としての話ではなく、不法行為による損害賠償金として処理をしてきた事案が多かった中、規定があるからという事もあるが、給与の支払いを行った事案として興味があります。懲戒事由が無効であるとして、定年再雇用が任用された。再雇用後の給与面での待遇について、定年年齢時の棒給は少なくとも支給Xが満68歳に達する年の年度末までになるものと解される。Xの雇用を保持する利益や名誉を侵害したとして不法行為を構成するとして、慰謝料請求が50万円と認められる。給与規定定年年齢に達した年度末の棒給号棒を固有号棒とし、昇給を行わない。ただし、担当する業務の規定により、適宜減額することがある。
2020. 05. 09
整理解雇の相当性
整理解雇の要件がわかりやすく記載されている。CMIは、旧CO、旧UAおよび被告Y社から業務遂行上の指揮命令を受けることなく独立して機内サービスの提供を行う。CMIのFAの労働契約の内容や給与の支払い関係についても各社と渾然一体となっているとはいえない。別個の会社と認められる。上記3社との間で労働契約またはこれに類する関係があったとはいえない。CMI単体で本件解雇の効力を判断するのが相当整理解雇は客観的に合理的であり、社会通念上も相当であって有効整理解雇の要件①高度な必要性旧UAからの業務委託が減少FAの業務が減少CMIが同ベースの閉鎖を決断したことは企業経営の観点から合理的②不利益を相当程度緩和、可能な限りの解雇回避措置早期退職に伴う特別退職金の支払いFAの年収水準を維持した上での地上職への転換③解雇者選定の合理性提案に応じない者全員が解雇されている④団体交渉複数回の団体交渉を通じて、組合に対し、成田ベース閉鎖の経緯を説明
2020. 05. 09
夜行バス車内の休憩時間の労働時間相当性の有無
バス車内での休憩を余儀なくされたとしても、それだけで労働時間に該当するとは言えない。労働基準法32条労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。不活動仮眠時間について、役務を提供した事実は認められない。携帯電話の管理についても、それを使用することは稀であった。使用者の指揮命令下に置かれていたとは評価するに足りない。職務の性質上、休憩する場所がバス車内であることはやむを得ない。制服の着用は義務付けられていたものの、上着を脱ぐことを許容して、可能な限り指揮命令下から解放されるように配慮
2020. 05. 09
不利益変更拒否による不就労期間の未払賃金請求
不利益変更が解消されるまでは賃金の請求できる可能性はある。(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
2020. 05. 09
育児休業終了時の契約社員契約締結の妥当性
今回の判例において、考えられるところは育児介護休業法に基づいて、規定を作成するにあたり、企業として、正社員の仕事をしてもらうにあたり、どこまで有れば大丈夫なのかを会社として取り決める必要がある。無理にでも正社員として対応してもらうのではなく、契約社員としての選択肢も入れるのは大丈夫なように思う。ただ、正社員と契約社員とでどのように仕事が異なるのかを明確にすることが重要となる。雇用形態正社員正社員正社員(時短勤務)コマ数が定めれており、リーダーの役割を担う。契約社員(1年更新)週4日勤務週3日勤務コマ数の定めがなく、リーダーの役割を担わない契約社員として期間1年とする有機労働契約が締結単に一時的に労働条件の一部を変更するものとは言えない。雇用形態として選択の対象とされていた中から、契約社員を選択雇用契約を取り交わし、正社員契約を解約したものと認めるのが相当雇用形態の説明及び本件契約社員契約締結の際の説明の内容並びにその状況実際、合意の時点において、子を預ける保育園が見付からず、家族のサポートも十分に得られない週5日勤務が困難であり、週3日4時間の就労しか出来なかった週5日勤務の正社員のコーチとして復職すれば、クラスを担当すること自体が困難運営に大きな支障が生じたり、欠勤を繰り返すなどして自己都合による退職を余儀なくされる勤務成績が不良で就業に適さないとして解雇されるか、懲戒解雇される。個別に説明され、復職する際の自己に適合する雇用形態を十分に検討する機会が与えられていた育休業終了の前日に、これらを確認して契約社員契約を締結したものである。均等法や育児介護休業法の不利益な取り扱いには当たらない退職金規程契約社員の期間は勤続年数に参入しない旨が記載改めて正社員契約を再締結し、正社員として就労した後に退職した際に、勤続年数から契約社員の期間を控除することとされている。正社員転換について契約社員は、本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提ですとの記載は、正社員として稼働する環境が整い、本人が希望した場合において、合意によって正社員契約を締結するという趣旨本人からの申し出のみで正社員として労働契約の効力が生じるというものではない
2020. 05. 09
人事評価(職能等級規程)に基づく降格の有効性について
考察)今回の判例において、降格を求める上での人事評価の重要性が認められる。概要)人事評価権に基づくものである限り、原則として使用者の裁量に委ねられる。著しく不合理な評価によって、大きな不利益を与える場合には、人事権の濫用人事評価が2年連続で6段階中下から2段階以下審議を経て降格が決定される。職能等級規程のもとで、1等級降格され職能給の月額が下がった降格につき、人事権を濫用してものであるとは認められない。
2020. 05. 09
定年再雇用に伴う選択制度の有効性について
考察)今回の判例としては、再雇用社員制度(これまでよりも低い支給額)と継匠社員制度(正社員と同等)の二つの選択制度が存在する。60歳以降の再雇用時に評価基準を設けて、選択される。評価基準については、賛否あるが、一般的なものを継匠社員とするのか、再雇用社員とするのか?というところである。通常、僕たちが話をする上で、一般的な(普通の)社員を継匠社員とする方が、無難であると思われる。今回の判例においては、選択制度を作って、企業側で選択することについて問題視されることはなさそうな感じである。概要)継続雇用制度その他の高年齢者雇用確保措置高年法9条1項の趣旨に反しない限り、事業主の実情に応じた多様かつ柔軟な措置が許容(高年齢者雇用確保措置)第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」 という。)のいずれかを講じなければならない。一 当該定年の引上げ二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入三 当該定年の定めの廃止2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊 の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項 において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定 年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が 引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年 齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。高年法9条1項は、私法上の義務を負わせ、または同項に違反する労働契約を無効とするなどの私法的効力を有するものではない。事業主が原告Xらを雇用する義務を負い、Xらが雇用されるものと期待することについて合理的な理由などが基礎付けられるということもできない。
2020. 05. 09
入社時説明と入社後の契約内容の相違
入社前の求人票及び、面談の重要性入社時に契約書や労働条件通知書がないと、結局契約後に問題が露呈することが考えられる判例であると思われる。
2020. 05. 09